踏み出す (6)
オープンデータの定義にはさまざまなものがあります。
平成29年5月30日、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定)において、以下のようにオープンデータは定義されています。
オープンデータとは、国、地方公共団体及び事業者が保有する官民データのうち、国民誰もがインターネット等を通じて容易に利用(加工、編集、再配布等)できるよう、以下のいずれにも該当する形で公開されたデータを指します。
- 営利目的、非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用されたもの
- 機械判読に適したもの
- 無償で利用できるもの
ただし、オープンデータの定義は他にもあり、例えばオープン・ナレッジによるオープンの定義では、「複製のための適切な価格の支払い」が認められています。
政府は、公共データは国民共有の財産であるとの認識を示した「電子行政オープンデータ戦略」(平成24年7月4日 高度情報通信ネットワーク社会推進本部決定)等に基づき、オープンデータの取組を推進しています。
オープンデータに取り組む意義としては、次の3点が上げられます。
- 国民参加・官民協働の推進を通じた諸課題の解決、経済活性化
- 行政の高度化・効率化
- 透明性・信頼の向上
平成28年12月14日に公布・施行された「官民データ活用推進基本法」(以下「官民データ法」と言う。)は、官民データ活用の推進により国民が安全で安心して暮らせる社会及び快適な生活環境の実現に寄与することを目的としており、国、地方公共団体、事業者が保有する官民データの容易な利用等について規定されています。
特に、官民データ活用推進基本法第11条第1項では、地方公共団体は、国と同様に、保有するデータを国民が容易に利用できるよう必要な措置を講ずるものとされており、オープンデータを推進することが求められています。
官民データ活用推進基本法第11条第1項
国及び地方公共団体は、自らが保有する官民データについて、個人及び法人の権利利益、国の安全等が害されることのないようにしつつ、国民がインターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて容易に利用できるよう、必要な措置を講ずるものとする。
地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(平成31年3月26日公開)によれば、オープンデータに取り組む際の課題として、多数の自治体が次の3点を挙げています。
- オープンデータの効果・メリット・ニーズが不明確
- オープンデータを担当する人的リソースがない
- オープンデータにどう取組んで良いか分からない
オープンデータの効果はデータを公開しただけではわかりません。データを利活用することで課題が解決されたり、新しいサービスが生まれることで、自治体職員も市民もオープンデータのメリットを実感できるようになります。オープンデータに取り組むにあたっては、最初から第4ステップの「活用する」段階までを見通して計画を立て、実行する必要があります。
こうしたオープンデータの実行計画を立案したり、実際にオープンデータを公開する際には、人的リソースの不足が問題となります。オープンデータリーダ育成研修に協力していただいている地域メンターに相談するなどして、最初の段階から地域でオープンデータを推進している団体と連携して取り組むことを推奨します。総務省の地域情報化アドバイザーや内閣官房のオープンデータ伝道師など、政府が派遣する専門家を活用することも有効です。
本実務講習は、「オープンデータにどう取組んで良いか分からない」という課題を抱えているオープンデータリーダを対象に、オープンデータの推進活動を担うために必要な実践的ノウハウを身につけていただくことを目的としています。
出典:地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦略室、平成31年3月26日公開)(内閣官房IT総合戦略室、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)をもとに公益財団法人九州先端科学技術研究所が作成
日本では、政府によるさまざまなオープンデータ推進施策によって、オープンデータに取り組む自治体が順調に増えています。
「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進計画」においては、「平成32年度までに地方公共団体のオープンデータ取組率100%」という政府目標が掲げられています。
令和元年6月現在、47都道府県のすべてがオープンデータの取り組みを開始し、取り組み済みの市区町村も548に達しています。
自治体の最新の公開状況につきましては以下を参照してください。
地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦略室、平成31年3月26日公開)によれば、オープンデータについて「良く知っている」という自治体は全体の約4割です。「名前は知っている」あるいは「知っているが詳細は分からない」という自治体が過半数を占めています。自治体の規模が小さくなるほどオープンデータについて知っている自治体の割合は少なくなります。
オープンデータを公開しているかどうかについては、自治体の規模が小さくなるほどオープンデータを公開している自治体の割合は少なくなります。都道府県、規模の大きな基礎自治体からオープンデータが進んでいることがわかります。
総人口が少なく規模の小さい自治体がオープンデータに踏み出すためにどうすれば良いかが課題となっています。
出典:地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦略室、平成31年3月26日公開)(内閣官房IT総合戦略室、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)をもとに公益財団法人九州先端科学技術研究所が作成
小規模な自治体が単独でオープンデータを推進することが難しい場合、都市圏のような広域で連携してオープンデータに取り組むことも効果的です。
例えば、福岡都市圏は17市町から構成されていますが、そのうちの7町村は総人口が5万人以下です。福岡都市圏では、17市町が連携してオープンデータを推進するためにワーキンググループを立ち上げました。オープンデータ推進について、従来からある福岡都市圏という枠組みを利用することで、首長や幹部の理解を得やすくなり、2018年10月1日に17市町すべてがオープンデータ公開を開始しました。
出典:「福岡市におけるデータ活用について」(福岡市、2018/9/28)
以下は2018年10月1日から公開を開始した福岡都市圏のオープンデータカタログサイトです。17市町のオープンデータをここから利用することができます。

https://odcs.bodik.jp/fukuoka-toshiken/
自治体がオープンデータを推進する際には、テーマや分野を絞ることが効果的です。例えば、弘前市では「防災」「観光」など、市民にわかりやすいテーマを設定しました。水戸市では、総合計画等の重点プロジェクトと位置付けられている分野から始めています。
また、既にホームページに公開されているデータから公開したり、情報公開請求の多いデータなど利用者が想定できるデータから公開することによって、スムーズなオープンデータ化に成功した事例もあります。
例えば、名古屋市はホームページにオープンデータライセンスを付与して公開しています。情報公開請求の多い「新規飲食店営業等営業許可施設一覧」のオープンデータ化を始める自治体もあります。
いずれの方法においても、できる範囲で職員の抵抗感の少ないデータから始めることが効果的です。
テーマや分野を絞ります
- 「防災」「観光」など、市民にわかりやすいテーマを設定する
- 総合計画等の重点プロジェクトと位置付けられている分野から始める
利用者が想定できるデータから始めます
- ホームページにオープンデータライセンスを付与して公開
- 情報公開請求の多い「新規飲食店営業等営業許可施設一覧」を公開
自治体がオープンデータを推進するためのガイドにつきましては、以下を参照してください。
- ガイド(資料集)