整備する (9)
本サイトの実務講習コンテンツの中から関心のある項目があれば、まず目を通してみてください。オープンデータを公開している自治体と、実際に公開されているデータを知りたい場合には、自治体オープンデータサイト一覧が参考になります。自治体オープンデータ推進リーダー向け資料集には、自治体でオープンデータを推進するリーダー向けのガイドをはじめ、必要な資料が多数揃っています。関心のあるものを参照してみてください。
オープンデータに関する基本的な情報を入手できたら、オープンデータ伝道師(内閣官房IT総合戦略室)や地域情報化アドバイザー(総務省)などの専門家や、民間の支援組織に協力を依頼して、今後の具体的な進め方を相談するのがよいでしょう。オープンデータ伝道師と地域情報化アドバイザー、民間の支援組織に関する情報も自治体オープンデータ推進リーダー向け資料集に掲載されています。
情報を得ます
- 実務研修の中から関心のある項目に目を通す
- 自治体オープンデータサイト一覧から自治体の現状をを知る
- ガイドを読む
専門家の力を借ります
- オープンデータ伝道師(内閣官房IT総合戦略室)
- 地域情報化アドバイザー(総務省)
- 民間の支援組織
ガイド、アドバイザーおよび民間の支援組織については、以下を参照してください。
情報公開制度は「情報公開法」に基づいて請求権者から開示請求を受けた場合に、開示請求を受けた情報だけを公開します。これに対してオープンデータは、開示請求などの請求行為は必要とせず、公的機関が保有するデータを原則として公開します。情報公開請求とオープンデータとの違いについては以下の表を参照してください。
出典:「1.オープンデータと情報公開制度の違い」、オープンデータをはじめよう〜地方公共団体のための最初の手引書〜(内閣官房IT総合戦略室、2017/12/22)(内閣官房IT総合戦略室、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)
自治体のホームページで公開されているデータは、誰でも自由に見ることができます。しかしデータの二次利用に関しては、著作権法上認められている場合を除いて制限されているため、市民や企業などがホームページのデータを利用する場合には、事前に自治体から個別に許可を得る必要があります。
例えば、福岡市のホームページの著作権表記を見てみましょう。著作権表記は以下のようになっています。このままでは自由に二次利用することはできません。
福岡市ホームページの著作権表記例
福岡市ホームページに掲載している個々の情報(文章、写真、イラストなど)に関する著作権は、原則として福岡市に帰属します。(一部の画像等の著作権は、福岡市以外の原著作者が所有しています。)当ホームページの内容について、「私的使用のための複製」や「引用」など著作権法上認められた場合を除き、無断で複製・転用することはできません。
オープンデータとして公開することにより、データの二次利用に関する制限は無くなり、個別に許可を得る必要も無くなります。オープンデータとすることで商用利用も可能となり、許可を得る手間をかけずに広く自由にデータを利用することができるようになります。
ホームページのライセンスや利用規約を変更して、ホームページのデータをそのままオープンデータとして公開することもできます。
行政データをオープンデータとして公開するためには、庁内の調整から始まり、データの選択と整形、カタログサイトへ掲載などを行う必要があります。作業の自動化支援ツールを使ったとしても、少なからず作業が発生するため業務負担は増えます。
- 庁内の調整
- データの選択と整形
- カタログサイトへの掲載
一方、公開したオープンデータが広く利用されるようになれば、オープンデータ化に要した新たな業務負担をカバーできるだけでなく、全体で見ると業務は効率化され負担の軽減に繋がります。
例えば、福岡市は情報公開請求が多い新規飲食店の営業許可施設一覧をオープンデータとして公開することによって、本一覧に関する情報公開請求件数をほぼゼロとすることができました。この福岡市のケースでは、オープンデータ化に要するコストよりも、情報公開請求に応えて情報を提供するコストの方が高かったため、全体として業務の効率化を実現することができました。
オープンデータの利活用を促進し、且つ、全体の業務負担を軽減するためには、何らかの手段によって既にデータを自治体外部に提供しているデータに着目してみるのが1つの方法です。例えば、以下のようなデータからオープンデータ化を進めることが効果的です。
- 情報公開請求の多いデータ(新規飲食店営業許可施設一覧など)
- 自治体から定期的に個別に事業者に提供しているデータ(イベントデータなど)
- 市民からの要望やビジネスニーズが強いデータ(ハザードマップ、小学校区など)
以下は福岡市がデータカタログサイトで公開している「飲食店営業等営業許可施設一覧」のオープンデータです。

https://ckan.open-governmentdata.org/dataset/401307_insyokuteneigyoutoueigyoukyokasisetuitiran
平成29年においては、「飲食店営業等営業許可施設一覧」のデータセットページへのアクセス数がランキングのトップとなりました。
これまで情報公開請求でデータを請求していた企業や市民が、オープンデータカタログサイトからデータをダウンロードするようになったと考えられます。
以下は実際に福岡市が公開している「飲食店営業等営業許可施設一覧」のデータです。

https://ckan.open-governmentdata.org/dataset/401307_insyokuteneigyoutoueigyoukyokasisetuitiran/resource/2bc1b66d-94c6-4d9d-a4da-9045946f6665
オープンデータの取組に関する自治体アンケート結果(内閣官房IT総合戦略室、平成28年12月実施)によれば、情報(システム)系部門が統括している自治体が3割以上で、その他には企画政策系部門、総務系部門などです。ただし、半数以上の自治体では明確な統括部門を定めていません。
出典:オープンデータの取組に関する自治体アンケート結果(内閣官房IT総合戦略室、平成28年12月実施)(内閣官房IT総合戦略室、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)をもとに公益財団法人九州先端科学技術研究所が作成
地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦略室、平成31年3月26日公開)によれば、自治体がオープンデータとして公開している分野は、基礎的な統計情報(人口、産業等)、防災分野の各種情報、公共施設の位置やサービスに関する情報が多くなっています。
しかし、自治体がオープンデータとして公開しているデータセット数、つまりオープンデータの種類は多くありません。過半数の自治体は50種類以下で、10種類以下の自治体も3割以上あります。
出典:地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦略室、平成31年3月26日公開)(内閣官房IT総合戦略室、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)をもとに公益財団法人九州先端科学技術研究所が作成
内閣官房IT総合戦略室は、地方公共団体によるオープンデータの公開とその利活用を促進するため、オープンデータに取り組み始める地方公共団体の参考となるよう公開することが推奨されるデータセットおよびフォーマット標準例を公開しています。
推奨データセット 基本編
- AED設置箇所一覧
- 介護サービス事業所一覧
- 医療機関一覧
- 文化財一覧
- 観光施設一覧
- イベント一覧
- 公衆無線LANアクセスポイント一覧
- 公衆トイレ一覧
- 消防水利施設一覧
- 指定緊急避難場所一覧
- 地域・年齢別人口
- 公共施設一覧
- 子育て施設一覧
- オープンデータ一覧
推奨データセット 応用編
- A-1 食品等営業許可・届出一覧(ベータ版)
- B-1 ボーリング柱状図等
- B-2 都市計画基礎調査情報
- B-3 調達情報
- B-4 標準的なバス情報フォーマット
自治体においては、必ずしも最初から全てのデータセット公開に取り組まなければならないというものではなく、本データセットを参考に、各団体において公開可能なデータセットから公開を進めていただくことを期待するものです。
また、推奨データセットをオープンデータとして公開する際には、フォーマット標準で示されている全項目が必要であるわけではなく、公開時にデータが存在していない場合には、その項目を空白で公開して、後ほど追加するという形でも構いません。
各自治体が同じフォーマットでデータを公開することにより、異なる自治体が公開するデータを横断的に活用することが容易になるなど、利用者の利便性が向上します。
推奨データセットには「基本編」と「応用編」があります。基本編としては「AED設置箇所一覧」、「介護サービス事業所一覧」、「医療機関一覧」など14種類のデータセットが定められており、応用編としては「食品等営業許可・届出一覧」、「ボーリング柱状図等」、「都市計画基礎調査情報」、「調達情報」、「標準的なバス情報フォーマット」の5種類が定められています。
さらに推奨データセットの基本編に対しては、項目名や形式、必須項目であるか否かを定めた「データ項目定義書」が内閣官房IT総合戦略室から公開されています。データ項目定義書にはフォーマット標準の他にも、ファイル名の命名規則、コード体系、データ項目値の選択肢なども具体的に記載されていますので、推奨データセットをオープンデータとして公開する際には、データ項目定義書を参考にしてデータを作成するようにしてください。

推奨データセットに対する「データ項目定義書」AED設置箇所一覧の例、 出典:推奨データセット(ベータ版)、https://cio.go.jp/policy-opendata
推奨データセットの詳細につきましては、以下を参照ください。
- 標準化(資料集)
データは著作物になっている場合もあり、そうでない場合もあります。
著作物は一般に思想や感情の創作的な表現とされます。事実をそのまま記録しただけのデータであれば、それは思想や感情ではなく事実の表現であり、表現には創作性がない場合もあります。ですが、データセットに含まれる事実の取捨選択、配列、体系的な構成などに創作性がある場合には、そのデータセットが著作物になる場合もあると考えられます。
なお、裁判所は「創作性」についてはかなり低い基準で判断をする傾向にあり、表現が他に見られない独特のものであることや、前例を見たいような斬新なものであることなどは通常求められません。
なお、あるデータが著作物であるかどうかは、弁護士のような専門家のアドバイスを仰いでも判断が難しい場合もあります。
個人情報や個人データは、これまでは、第三者に対して本人の同意なく提供したり、目的の限定なく利用させることができませんでした。そこで、オープンデータとしては個人情報や個人データを除外すると考えられてきました。
しかし、平成29年5月に施行開始となった改正個人情報保護法においては、匿名加工情報の制度が設けられ、特定の個人を識別することができないように個人情報や個人データを加工した情報を「匿名加工情報」と定義し、一定のルールの下で本人の同意を得ることなく目的外の利用および第三者提供ができるようになりました。これにより、個人の属性情報、移動・行動・購買履歴、端末から収集された情報、人流情報などが「匿名加工情報」として広く利用できるようになります。

出典:https://www.ppc.go.jp/personal/tokumeikakouInfo/
今後は、こうした「匿名加工情報」がオープンデータとして公開されることにより、新事業や新サービスの創出、国民生活の利便性の向上につながることが期待されています。
- 匿名加工情報制度について(個人情報保護委員会)
- 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(個人情報保護委員会)