踏み出す (6)
オープンデータの定義にはさまざまなものがあります。
平成29年5月30日、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定)において、以下のようにオープンデータは定義されています。
オープンデータとは、国、地方公共団体及び事業者が保有する官民データのうち、国民誰もがインターネット等を通じて容易に利用(加工、編集、再配布等)できるよう、以下のいずれにも該当する形で公開されたデータを指します。
- 営利目的、非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用されたもの
- 機械判読に適したもの
- 無償で利用できるもの
ただし、オープンデータの定義は他にもあり、例えばオープン・ナレッジによるオープンの定義では、「複製のための適切な価格の支払い」が認められています。
政府は、公共データは国民共有の財産であるとの認識を示した「電子行政オープンデータ戦略」(平成24年7月4日 高度情報通信ネットワーク社会推進本部決定)等に基づき、オープンデータの取組を推進しています。
オープンデータに取り組む意義としては、次の3点が上げられます。
- 国民参加・官民協働の推進を通じた諸課題の解決、経済活性化
- 行政の高度化・効率化
- 透明性・信頼の向上
平成28年12月14日に公布・施行された「官民データ活用推進基本法」(以下「官民データ法」と言う。)は、官民データ活用の推進により国民が安全で安心して暮らせる社会及び快適な生活環境の実現に寄与することを目的としており、国、地方公共団体、事業者が保有する官民データの容易な利用等について規定されています。
特に、官民データ活用推進基本法第11条第1項では、地方公共団体は、国と同様に、保有するデータを国民が容易に利用できるよう必要な措置を講ずるものとされており、オープンデータを推進することが求められています。
官民データ活用推進基本法第11条第1項
国及び地方公共団体は、自らが保有する官民データについて、個人及び法人の権利利益、国の安全等が害されることのないようにしつつ、国民がインターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて容易に利用できるよう、必要な措置を講ずるものとする。
地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(平成31年3月26日公開)によれば、オープンデータに取り組む際の課題として、多数の自治体が次の3点を挙げています。
- オープンデータの効果・メリット・ニーズが不明確
- オープンデータを担当する人的リソースがない
- オープンデータにどう取組んで良いか分からない
オープンデータの効果はデータを公開しただけではわかりません。データを利活用することで課題が解決されたり、新しいサービスが生まれることで、自治体職員も市民もオープンデータのメリットを実感できるようになります。オープンデータに取り組むにあたっては、最初から第4ステップの「活用する」段階までを見通して計画を立て、実行する必要があります。
こうしたオープンデータの実行計画を立案したり、実際にオープンデータを公開する際には、人的リソースの不足が問題となります。オープンデータリーダ育成研修に協力していただいている地域メンターに相談するなどして、最初の段階から地域でオープンデータを推進している団体と連携して取り組むことを推奨します。総務省の地域情報化アドバイザーや内閣官房のオープンデータ伝道師など、政府が派遣する専門家を活用することも有効です。
本実務講習は、「オープンデータにどう取組んで良いか分からない」という課題を抱えているオープンデータリーダを対象に、オープンデータの推進活動を担うために必要な実践的ノウハウを身につけていただくことを目的としています。
出典:地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦略室、平成31年3月26日公開)(内閣官房IT総合戦略室、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)をもとに公益財団法人九州先端科学技術研究所が作成
日本では、政府によるさまざまなオープンデータ推進施策によって、オープンデータに取り組む自治体が順調に増えています。
「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進計画」においては、「平成32年度までに地方公共団体のオープンデータ取組率100%」という政府目標が掲げられています。
令和元年6月現在、47都道府県のすべてがオープンデータの取り組みを開始し、取り組み済みの市区町村も548に達しています。
自治体の最新の公開状況につきましては以下を参照してください。
地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦略室、平成31年3月26日公開)によれば、オープンデータについて「良く知っている」という自治体は全体の約4割です。「名前は知っている」あるいは「知っているが詳細は分からない」という自治体が過半数を占めています。自治体の規模が小さくなるほどオープンデータについて知っている自治体の割合は少なくなります。
オープンデータを公開しているかどうかについては、自治体の規模が小さくなるほどオープンデータを公開している自治体の割合は少なくなります。都道府県、規模の大きな基礎自治体からオープンデータが進んでいることがわかります。
総人口が少なく規模の小さい自治体がオープンデータに踏み出すためにどうすれば良いかが課題となっています。
出典:地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦略室、平成31年3月26日公開)(内閣官房IT総合戦略室、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)をもとに公益財団法人九州先端科学技術研究所が作成
小規模な自治体が単独でオープンデータを推進することが難しい場合、都市圏のような広域で連携してオープンデータに取り組むことも効果的です。
例えば、福岡都市圏は17市町から構成されていますが、そのうちの7町村は総人口が5万人以下です。福岡都市圏では、17市町が連携してオープンデータを推進するためにワーキンググループを立ち上げました。オープンデータ推進について、従来からある福岡都市圏という枠組みを利用することで、首長や幹部の理解を得やすくなり、2018年10月1日に17市町すべてがオープンデータ公開を開始しました。
出典:「福岡市におけるデータ活用について」(福岡市、2018/9/28)
以下は2018年10月1日から公開を開始した福岡都市圏のオープンデータカタログサイトです。17市町のオープンデータをここから利用することができます。

https://odcs.bodik.jp/fukuoka-toshiken/
自治体がオープンデータを推進する際には、テーマや分野を絞ることが効果的です。例えば、弘前市では「防災」「観光」など、市民にわかりやすいテーマを設定しました。水戸市では、総合計画等の重点プロジェクトと位置付けられている分野から始めています。
また、既にホームページに公開されているデータから公開したり、情報公開請求の多いデータなど利用者が想定できるデータから公開することによって、スムーズなオープンデータ化に成功した事例もあります。
例えば、名古屋市はホームページにオープンデータライセンスを付与して公開しています。情報公開請求の多い「新規飲食店営業等営業許可施設一覧」のオープンデータ化を始める自治体もあります。
いずれの方法においても、できる範囲で職員の抵抗感の少ないデータから始めることが効果的です。
テーマや分野を絞ります
- 「防災」「観光」など、市民にわかりやすいテーマを設定する
- 総合計画等の重点プロジェクトと位置付けられている分野から始める
利用者が想定できるデータから始めます
- ホームページにオープンデータライセンスを付与して公開
- 情報公開請求の多い「新規飲食店営業等営業許可施設一覧」を公開
自治体がオープンデータを推進するためのガイドにつきましては、以下を参照してください。
- ガイド(資料集)
整備する (9)
本サイトの実務講習コンテンツの中から関心のある項目があれば、まず目を通してみてください。オープンデータを公開している自治体と、実際に公開されているデータを知りたい場合には、自治体オープンデータサイト一覧が参考になります。自治体オープンデータ推進リーダー向け資料集には、自治体でオープンデータを推進するリーダー向けのガイドをはじめ、必要な資料が多数揃っています。関心のあるものを参照してみてください。
オープンデータに関する基本的な情報を入手できたら、オープンデータ伝道師(内閣官房IT総合戦略室)や地域情報化アドバイザー(総務省)などの専門家や、民間の支援組織に協力を依頼して、今後の具体的な進め方を相談するのがよいでしょう。オープンデータ伝道師と地域情報化アドバイザー、民間の支援組織に関する情報も自治体オープンデータ推進リーダー向け資料集に掲載されています。
情報を得ます
- 実務研修の中から関心のある項目に目を通す
- 自治体オープンデータサイト一覧から自治体の現状をを知る
- ガイドを読む
専門家の力を借ります
- オープンデータ伝道師(内閣官房IT総合戦略室)
- 地域情報化アドバイザー(総務省)
- 民間の支援組織
ガイド、アドバイザーおよび民間の支援組織については、以下を参照してください。
情報公開制度は「情報公開法」に基づいて請求権者から開示請求を受けた場合に、開示請求を受けた情報だけを公開します。これに対してオープンデータは、開示請求などの請求行為は必要とせず、公的機関が保有するデータを原則として公開します。情報公開請求とオープンデータとの違いについては以下の表を参照してください。
出典:「1.オープンデータと情報公開制度の違い」、オープンデータをはじめよう〜地方公共団体のための最初の手引書〜(内閣官房IT総合戦略室、2017/12/22)(内閣官房IT総合戦略室、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)
自治体のホームページで公開されているデータは、誰でも自由に見ることができます。しかしデータの二次利用に関しては、著作権法上認められている場合を除いて制限されているため、市民や企業などがホームページのデータを利用する場合には、事前に自治体から個別に許可を得る必要があります。
例えば、福岡市のホームページの著作権表記を見てみましょう。著作権表記は以下のようになっています。このままでは自由に二次利用することはできません。
福岡市ホームページの著作権表記例
福岡市ホームページに掲載している個々の情報(文章、写真、イラストなど)に関する著作権は、原則として福岡市に帰属します。(一部の画像等の著作権は、福岡市以外の原著作者が所有しています。)当ホームページの内容について、「私的使用のための複製」や「引用」など著作権法上認められた場合を除き、無断で複製・転用することはできません。
オープンデータとして公開することにより、データの二次利用に関する制限は無くなり、個別に許可を得る必要も無くなります。オープンデータとすることで商用利用も可能となり、許可を得る手間をかけずに広く自由にデータを利用することができるようになります。
ホームページのライセンスや利用規約を変更して、ホームページのデータをそのままオープンデータとして公開することもできます。
行政データをオープンデータとして公開するためには、庁内の調整から始まり、データの選択と整形、カタログサイトへ掲載などを行う必要があります。作業の自動化支援ツールを使ったとしても、少なからず作業が発生するため業務負担は増えます。
- 庁内の調整
- データの選択と整形
- カタログサイトへの掲載
一方、公開したオープンデータが広く利用されるようになれば、オープンデータ化に要した新たな業務負担をカバーできるだけでなく、全体で見ると業務は効率化され負担の軽減に繋がります。
例えば、福岡市は情報公開請求が多い新規飲食店の営業許可施設一覧をオープンデータとして公開することによって、本一覧に関する情報公開請求件数をほぼゼロとすることができました。この福岡市のケースでは、オープンデータ化に要するコストよりも、情報公開請求に応えて情報を提供するコストの方が高かったため、全体として業務の効率化を実現することができました。
オープンデータの利活用を促進し、且つ、全体の業務負担を軽減するためには、何らかの手段によって既にデータを自治体外部に提供しているデータに着目してみるのが1つの方法です。例えば、以下のようなデータからオープンデータ化を進めることが効果的です。
- 情報公開請求の多いデータ(新規飲食店営業許可施設一覧など)
- 自治体から定期的に個別に事業者に提供しているデータ(イベントデータなど)
- 市民からの要望やビジネスニーズが強いデータ(ハザードマップ、小学校区など)
以下は福岡市がデータカタログサイトで公開している「飲食店営業等営業許可施設一覧」のオープンデータです。

https://ckan.open-governmentdata.org/dataset/401307_insyokuteneigyoutoueigyoukyokasisetuitiran
平成29年においては、「飲食店営業等営業許可施設一覧」のデータセットページへのアクセス数がランキングのトップとなりました。
これまで情報公開請求でデータを請求していた企業や市民が、オープンデータカタログサイトからデータをダウンロードするようになったと考えられます。
以下は実際に福岡市が公開している「飲食店営業等営業許可施設一覧」のデータです。

https://ckan.open-governmentdata.org/dataset/401307_insyokuteneigyoutoueigyoukyokasisetuitiran/resource/2bc1b66d-94c6-4d9d-a4da-9045946f6665
オープンデータの取組に関する自治体アンケート結果(内閣官房IT総合戦略室、平成28年12月実施)によれば、情報(システム)系部門が統括している自治体が3割以上で、その他には企画政策系部門、総務系部門などです。ただし、半数以上の自治体では明確な統括部門を定めていません。
出典:オープンデータの取組に関する自治体アンケート結果(内閣官房IT総合戦略室、平成28年12月実施)(内閣官房IT総合戦略室、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)をもとに公益財団法人九州先端科学技術研究所が作成
地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦略室、平成31年3月26日公開)によれば、自治体がオープンデータとして公開している分野は、基礎的な統計情報(人口、産業等)、防災分野の各種情報、公共施設の位置やサービスに関する情報が多くなっています。
しかし、自治体がオープンデータとして公開しているデータセット数、つまりオープンデータの種類は多くありません。過半数の自治体は50種類以下で、10種類以下の自治体も3割以上あります。
出典:地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦略室、平成31年3月26日公開)(内閣官房IT総合戦略室、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)をもとに公益財団法人九州先端科学技術研究所が作成
内閣官房IT総合戦略室は、地方公共団体によるオープンデータの公開とその利活用を促進するため、オープンデータに取り組み始める地方公共団体の参考となるよう公開することが推奨されるデータセットおよびフォーマット標準例を公開しています。
推奨データセット 基本編
- AED設置箇所一覧
- 介護サービス事業所一覧
- 医療機関一覧
- 文化財一覧
- 観光施設一覧
- イベント一覧
- 公衆無線LANアクセスポイント一覧
- 公衆トイレ一覧
- 消防水利施設一覧
- 指定緊急避難場所一覧
- 地域・年齢別人口
- 公共施設一覧
- 子育て施設一覧
- オープンデータ一覧
推奨データセット 応用編
- A-1 食品等営業許可・届出一覧(ベータ版)
- B-1 ボーリング柱状図等
- B-2 都市計画基礎調査情報
- B-3 調達情報
- B-4 標準的なバス情報フォーマット
自治体においては、必ずしも最初から全てのデータセット公開に取り組まなければならないというものではなく、本データセットを参考に、各団体において公開可能なデータセットから公開を進めていただくことを期待するものです。
また、推奨データセットをオープンデータとして公開する際には、フォーマット標準で示されている全項目が必要であるわけではなく、公開時にデータが存在していない場合には、その項目を空白で公開して、後ほど追加するという形でも構いません。
各自治体が同じフォーマットでデータを公開することにより、異なる自治体が公開するデータを横断的に活用することが容易になるなど、利用者の利便性が向上します。
推奨データセットには「基本編」と「応用編」があります。基本編としては「AED設置箇所一覧」、「介護サービス事業所一覧」、「医療機関一覧」など14種類のデータセットが定められており、応用編としては「食品等営業許可・届出一覧」、「ボーリング柱状図等」、「都市計画基礎調査情報」、「調達情報」、「標準的なバス情報フォーマット」の5種類が定められています。
さらに推奨データセットの基本編に対しては、項目名や形式、必須項目であるか否かを定めた「データ項目定義書」が内閣官房IT総合戦略室から公開されています。データ項目定義書にはフォーマット標準の他にも、ファイル名の命名規則、コード体系、データ項目値の選択肢なども具体的に記載されていますので、推奨データセットをオープンデータとして公開する際には、データ項目定義書を参考にしてデータを作成するようにしてください。

推奨データセットに対する「データ項目定義書」AED設置箇所一覧の例、 出典:推奨データセット(ベータ版)、https://cio.go.jp/policy-opendata
推奨データセットの詳細につきましては、以下を参照ください。
- 標準化(資料集)
データは著作物になっている場合もあり、そうでない場合もあります。
著作物は一般に思想や感情の創作的な表現とされます。事実をそのまま記録しただけのデータであれば、それは思想や感情ではなく事実の表現であり、表現には創作性がない場合もあります。ですが、データセットに含まれる事実の取捨選択、配列、体系的な構成などに創作性がある場合には、そのデータセットが著作物になる場合もあると考えられます。
なお、裁判所は「創作性」についてはかなり低い基準で判断をする傾向にあり、表現が他に見られない独特のものであることや、前例を見たいような斬新なものであることなどは通常求められません。
なお、あるデータが著作物であるかどうかは、弁護士のような専門家のアドバイスを仰いでも判断が難しい場合もあります。
個人情報や個人データは、これまでは、第三者に対して本人の同意なく提供したり、目的の限定なく利用させることができませんでした。そこで、オープンデータとしては個人情報や個人データを除外すると考えられてきました。
しかし、平成29年5月に施行開始となった改正個人情報保護法においては、匿名加工情報の制度が設けられ、特定の個人を識別することができないように個人情報や個人データを加工した情報を「匿名加工情報」と定義し、一定のルールの下で本人の同意を得ることなく目的外の利用および第三者提供ができるようになりました。これにより、個人の属性情報、移動・行動・購買履歴、端末から収集された情報、人流情報などが「匿名加工情報」として広く利用できるようになります。

出典:https://www.ppc.go.jp/personal/tokumeikakouInfo/
今後は、こうした「匿名加工情報」がオープンデータとして公開されることにより、新事業や新サービスの創出、国民生活の利便性の向上につながることが期待されています。
- 匿名加工情報制度について(個人情報保護委員会)
- 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(個人情報保護委員会)
公開する (18)
特定のアプリケーションでのみ使用可能なファイル形式や、仕様が非公開のファイル形式では、利用者がデータを使用できないことが想定されます。
オープンデータとして公開する場合は、ISO(国際標準化機構)、JIS(日本工業規格)など国際的な機関もしくは国内で制定されたファイル形式で公開するのが望ましいです。
出典:オープンデータをはじめよう ~ 地方公共団体のための最初の手引書 ~(内閣官房IT総合戦略室、平成29年12月22日改定)(内閣官房IT総合戦略室、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)をもとに公益財団法人九州先端科学技術研究所が編集
例えば、CSVとは、フィールドを区切り文字であるカンマ「, 」で区切ったテキストファイルのことです。CSVファイルで公開する場合には、RFC 4180の規格に準じた形式で公開するようにしてください。
GMLとは、地理情報システムやインターネット上で地理情報を交換するフォーマットとして使用されているもので、ISO 19136として規格が定義されています。
さらに、情報の種類に応じて適したファイル形式を選択することも重要です。
出典:オープンデータをはじめよう ~ 地方公共団体のための最初の手引書 ~(内閣官房IT総合戦略室、平成29年12月22日改定)(内閣官房IT総合戦略室、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)
例えば、予算・決算や統計などの場合には表形式のCSVやXLSXを、報告書などは文書形式のPDFやDOCXを選択するのが妥当です。
地理空間情報を含むデータの場合にはシェープファイル(Shape File、.shp)やジオジェイソン(GeoJSON)などの形式が適しています。
シェープファイルとは、地理情報システム間でのデータの相互運用におけるオープン標準として用いられるファイル形式です。ジオジェイソンとは、空間データをエンコードして、非空間属性を関連付けることができるファイルフォーマットです。
さらに、Webの父であるティム・バーナーズ=リーは、オープンデータの形式を5つのレベルに分けています。
★は、オープンライセンスでデータが公開されていることを表しています。ファイル形式などは問いません。
★★は、データが構造化されていることを表しています。エクセルなどが典型的な例になります。
★★★は、特定のソフトに縛られることなくだれでも利用できる形式であることを表しています。例えば、エクセルのデータをCSVに変換して公開すると、星3つのレベルになります。
★★★★は、データを一意に識別できるように識別子としてURI(Unified Resource Indicator)を使用していることを表します。データを表現する方法としては、RDF(Resource Description Framework)が用いられます。
★★★★★は、データとデータを結合したリンクト・オープンデータになっていることを表しています。データ同士が相互にリンクされることで、データのウェブができあがります。
自治体がオープンデータを公開する際の1つの目安としては、★★★の3つ星レベルを目標にするのが良いと思われます。
地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦略室、平成31年3月26日公開)によれば、7割以上の自治体が3つ星レベルでデータを公開しています。
出典:地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦略室、平成31年3月26日公開)(内閣官房IT総合戦略室、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)をもとに公益財団法人九州先端科学技術研究所が作成
データのカテゴリーは利用者がデータを探す際に最初の手がかりとなる重要なものです。国や他の自治体が採用しているカテゴリーと同じカテゴリーを使用することにより、オープンデータはより発見しやすくなります。
例えば、政府のオープンデータポータル「Data.go.jp」では、政府統計の総合窓口「e-Stat」における17分野をそのままカテゴリーとして使用しています。
- 国土・気象
- 人口・世帯
- 労働・賃金
- 農林水産業
- 鉱工業
- 商業・サービス業
- 企業・家計・経済
- 住宅・土地・建設
- エネルギー・水
- 運輸・観光
- 情報通信・科学技術
- 教育・文化・スポーツ・生活
- 行財政
- 司法・安全・環境
- 社会保障・衛生
- 国際
- その他
自治体ごとに独自のカテゴリーを決めて使用することもできます。その場合でも、政府や他の自治体と同じカテゴリーを使える部分があればそのまま使い、自治体独自のカテゴリーを追加して使用することを推奨します。
実際に使用されているカテゴリーにつきましては、以下を日本のオープンデータサイトを参照してください。
- 日本のオープンデータサイト(資料集)
利用者がデータを探しやすくするための方法としてメタデータを活用する方法があります。メタデータとは、オープンデータがどのようなデータであるのかを表すデータです。
メタデータは、情報利用者が必要なデータをデータカタログから検索する際のキーとなります。例えば以下のようなデータがメタデータとして使用されています。
- データの名称(タイトル)
- データの説明
- データ形式(ファイル形式)
- データが属するカテゴリ(国土・気象、人口・世帯、子育てなど)
- データに付与するタグ(統計、健康、レジャーなど)
- データを作成した組織
- データ作成者
- データ作成者の連絡先
- データ作成日
- データに付与されているライセンス
メタデータを付けることによって、利用者はオープンデータを探しやすくなります。

福岡市のメタデータの例
政府や自治体が使用しているオープンデータの主な公開手段は次の通りです。
- ホームページをそのままオープンデータとして公開
- 名古屋市など
- ホームページにオープンデータのファイル一覧を掲載
- 鹿児島市など
- オープンデータカタログサイトで公開
- 日本政府、福岡市、久留米市、福岡県など
ホームページでオープンデータを公開する方法(1と2)の場合、システム改修は最低限で済むため、費用をかけずオープンデータを素早く公開することが可能です。
オープンデータを公開するための専用のカタログサイトを開設する方法(3)の場合、新しいシステムの導入が必要となるため時間と費用を要しますが、データの検索や取得を支援する機能が揃っているため、公開後に利活用が促進されることが期待できます。
地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦略室、平成31年3月26日公開)によれば、約5割がホームページで、約4割がデータカタログサイトで公開しています。
出典:地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦略室、平成31年3月26日公開)(内閣官房IT総合戦略室、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)をもとに公益財団法人九州先端科学技術研究所が作成
データカタログサイトとダッシュボードを組み合わせた「地方公共団体向けオープンデータパッケージ」がオープンソースとして公開されていますので、こちらを使用することもできます。詳しくは以下を参照してください。
- ツール(資料集)
ホームページをそのままオープンデータとして公開(名古屋市の例)
名古屋市はホームページをそのままオープンデータとして公開しています。ホームページにデータの利用ルールを追記するだけですみますので、簡単にオープンデータを公開することができます。

ホームページをそのままオープンデータとして公開(名古屋市の例)
ホームページにオープンデータのファイル一覧を掲載(鹿児島市の例)
鹿児島市はホームページにオープンデータのファイル一覧を掲載しています。ホームページを作成しているCMSを使ってオープデータを公開することができるため、新しいシステムを導入する必要がありません。

ホームページにオープンデータのファイル一覧を掲載(鹿児島市の例)
オープンデータカタログサイトで公開(福岡市の例)
福岡市はオープンデータカタログサイトでオープンデータを公開しています。カタログサイトでは、データの検索や取得を支援するさまざまな機能を利用することが可能です。

オープンデータカタログサイトで公開(福岡市の例)
カタログサイトはオープンデータ公開のための専用のシステムであるため、導入には費用と時間がかかりますが、データの分類、発見、利用、広域活用などを支援するための機能が提供されているため、データ利活用の促進が期待できます。カタログサイトを利用した場合の利点はいくつかあります。カタログサイトでは、組織、グループ、タグなどを使用してデータを簡単に分類することができます。タグとは、データを分類するために付与する情報です。
カタログサイトでは、組織、グループ、タグによるフィルタリングや、メタデータおよびコンテンツのキーワード検索が可能で、表、グラフ、地図などでビジュアライズして内容を確認することもできるため、データを容易に発見することができます。
また、カタログサイトにデータを登録することでAPIが自動生成されるため、プログラムからデータの検索、追加、更新が可能になります。API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)とは、プログラムから機能を呼び出すための仕組みです。独立した複数のカタログサイトを簡単に1つに統合できるため、広域でのデータ公開にも適しています。
カタログサイトを利用した場合の利点
- データを簡単に分類できます
- 組織、グループ、タグ(*1)で分類
- データを容易に発見できます
- 組織、グループ、タグによるフィルタリング、メタデータおよびコンテンツのキーワド検索
- 表、グラフ、地図などでビジュアライズして内容を確認
- データをプログラムから利用できます
- プログラムからAPI(*2)によってデータの検索、追加、更新が可能
- データを広域で活用できます
- 独立した複数のサイトのデータを1箇所に統合
(*1)タグとはデータを分類するために付与する情報です
(*2)API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)とは、プログラムから機能を呼び出すための仕組みです。
カタログサイトとダッシュボードを組み合わせた「地方公共団体向けオープンデータパッケージ」がオープンソースとして公開されていますので、こちらを使用することもできます。詳しくは以下を参照してください。
- ツール(資料集)
オープンデータを公開する際にライセンスを明記必要があるのは、多くの人が著作権を侵害することなく手軽にデータを利用できるようにし、オープンデータを成功させるためです。
オープンデータは様々な人がデータを使えるようにする取り組み、政策です。一方著作権法により、データが著作物である場合には、権利者の許諾なしに無断でデータを複製するなどの利用行為は原則として違法な行為(著作権侵害)になってしまいます。
そこで、多くの人が手軽にデータを使えるようにするためのツールとして、オープンデータの取り組みに際しては、ライセンスが用いられます。
日本だけでなく世界中で利用されている代表的なライセンスが、クリエイティブ・コモンズ表示ライセンスです。
ライセンスの役割
- データが著作物である場合、権利者の許諾のない無断利用は著作権侵害となります
- ライセンスは、著作権を侵害することなくデータを利用できるようにするためのツールです
- 多くの人が手軽にデータを使えるようにしてオープンデータを成功させるために必要です
ライセンスの例
地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦室、平成31年3月26日公開)によれば、政府標準利用規約2.0またはクリエイティブ・コモンズ表示4.0国際(CC BY 4.0 国際)を使用している自治体が最も多く、約45パーセントを占めています。政府標準利用規約2.0とは日本政府が定めた利用規約で、CC BY 4.0 国際と互換性があります。次に多いのは、クリエイティブ・コモンズ表示2.1日本(CC BY 2.1 JP)で約34パーセントとなっています。CC BY 4.0 国際はCC BY 2.1 JPを改訂したライセンスです。独自の利用規約を定めて利用している自治体は少数に留まっています。
出典:地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦略室、平成31年3月26日公開)(内閣官房IT総合戦略室、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)をもとに公益財団法人九州先端科学技術研究所が作成
ライセンスの詳細につきましては、以下を参照してください。
- ライセンス(自治体オープンデータ推進リーダー向け資料集)
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)とは、法律や技術に関する専門的な知識がなくても、自分の希望する条件を組み合わせることで、自分の作品をインターネットを通じて世界に発信することができる画期的なライセンスシステムです。
地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦室、平成31年3月26日公開)によれば、8割以上の自治体がクリエイティブ・コモンズ・ライセンス、またはクリエイティブ・コモンズ表示4.0国際ライセンスと互換性のある政府標準利用規約2.0を使用しています。
出典:地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(内閣官房IT総合戦略室、平成31年3月26日公開)(内閣官房IT総合戦略室、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)をもとに公益財団法人九州先端科学技術研究所が作成
CCライセンスでは、多くのクリエイターが希望すると思われる典型的な条件を4つ準備し、それぞれ、アイコンでわかりやすく表示しています。この4つの典型的な条件とは、「表示」「非営利」「改変禁止」「継承」です。クリエイターは、この4つのアイコンを組み合わせて、自分の作品の利用条件を発信することができます。
- 表示(BY):作品のクレジットを表示すること
- 非営利(NC):営利目的での利用をしないこと
- 改変禁止(ND):元の作品を改変しないこと
- 継承(SA):元の作品と同じ組み合わせのCCライセンスで公開すること
出典:クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)
CCライセンスは、これら4つの条件を組み合わせたてできており、全部で6種類あります。
-
表示:CC-BY
原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示することを主な条件とし、改変はもちろん、営利目的での二次利用も許可される最も自由度の高いCCライセンス
-
表示—継承:CC-BY-SA
原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示し、改変した場合には元の作品と同じCCライセンス(このライセンス)で公開することを主な条件に、営利目的での二次利用も許可されるCCライセンス
-
表示—改変禁止:CC-BY-ND
原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示し、かつ元の作品を改変しないことを主な条件に、営利目的での利用(転載、コピー、共有)が行えるCCライセンス
-
表示—非営利:CC-BY-NC
原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示し、かつ非営利目的であることを主な条件に、改変したり再配布したりすることができるCCライセンス
-
表示—非営利—継承:CC-BY-NC-SA
原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示し、かつ非営利目的に限り、また改変を行った際には元の作品と同じ組み合わせのCCライセンスで公開することを主な条件に、改変したり再配布したりすることができるCCライセンス
-
表示—非営利—改変禁止:CC-BY-NC-ND
原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示し、かつ非営利目的であり、そして元の作品を改変しないことを主な条件に、作品を自由に再配布できるCCライセンス
出典:クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)
さらに詳細な説明につきましてはこちらを参照してください。
「クリエイティブ・コモンズ」とは、作品の利用と流通を図ろうとする活動の名前です。また、その活動を行っている団体の名前でもあります。日本では、コモンスフィアというNPO法人が中心となって活動を行っています。本部は米国にあり、それ以外にも世界の50を超える国や地域のプロジェクトチームが連携して活動しています。
コモンスフィアによる「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」の活動につきましては、以下を参照してください。さらに詳細な説明につきましてはこちらを参照してください。
クリエイティブ・コモンズ・ジャパンについて
クリエイティブ・コモンズ・ジャパンは主に日本においてCCライセンスの普及・実践を行うために活動する組織の名称です。2003 年から国際大学GLOCOMをホストとしてCreative Commons Public Licenseの日本語訳を行い、2004 年3月に、世界で米国についで2番目に、日本法準拠のCCライセンスをリリースしました。2006年3月には組織として独立するために事務局準備会を発足し、2007年7月25日に東京都の認可をうけ 特定非営利活動法人(NPO法人)となりました。 私たちは今後も、CCライセンスが日本において、教育機関や企業、そして個々の情報発信者達による柔軟な著作権表現が普及していくための様々な活動を行っていきます。
CCライセンスは、日本の著作権法その他の法律に基づいていますので、原則としては法律的な拘束力があります。
しかし、著作権法の解釈の中には、法律や判例を参照しても明らかになっていない部分があり、その部分をクリエイティブ・コモンズやクリエイティブ・コモンズ・ジャパンが決めることはできません。利用許諾条項をよく読んでお使いください。
バージョン4.0は2.1に対して、下記のような改訂が適用されました。
- 全体に読み易く、曖昧さや履行が困難な条項が整理されました。
- ライセンス対象が「作品(Work)」から「マテリアル(Material)」に変更されました。これは、ライセンス対象をデータベースなど、より広い範囲に適応できるよう広げるためです。
- 許諾を受けた人がライセンスに違反した場合でも、違反に気が付いてから30日以内に違反状態を是正すれば、自動的に許諾を再度得られるようになりました。
- バージョン2.1ライセンスの日本語で提供しているもの(CC-BY 2.1JPなど)は、日本法に準拠したライセンスとして、他の国の法律に準拠したライセンスとは厳密には別個のものとしていました。これに対して、バージョン4.0(CC-BY 4.0など)は、日本法にも他の国の法律にも「international(国際)」という単一のライセンスで対応する内容に変更しました(つまり、各国ごとのバージョンがありません)。各言語で提供されるライセンスは、公式翻訳という位置づけになります。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスならびに政府標準利用規約においては、基本的に最新のライセンスの利用をお勧めしています。これはライセンスの改訂に伴ってライセンスの法的効力や機能などが改善されることが多いためです。
CCライセンスは取消ができません。つまり、CCライセンスのついたデータを入手した誰かに対して、そのライセンスで認められている利用を止めることはできません。
CCライセンスをつけたデータの公表を止めることはいつでもできますが、既に出回ってしまったデータのコピーは、それが単なるコピーでも、編集著作物や二次的著作物に含まれるものであっても、それを回収するということはできません。
したがって、CCライセンスを選ぶときは、たとえ後になってデータの公表を中止することになったときでも、他の人がライセンスに従ってデータを利用することにあなた自身が不満を覚えないようなものを選ぶように注意しなくてはいけません。
そのライセンスでデータを提供している旨の記述が最低限必要になります。他にも掲載しておいた方がよい情報や、場合によって掲載が必要な情報などがあります。
クリエイティブ・コモンズ表示4.0(CC-BY 4.0)ライセンスの場合には以下のような表示をすることになります。
- 「このデータセットはCC BY 4.0で提供されています」「このデータセットはクリエイティブ・コモンズ表示4.0で提供されています」など、ライセンスに関する注意書き
- ライセンスのURL
- 免責条項に関する注意書きの有無と、ある場合はその記載箇所
- データセットに関する著作権表示の有無と、ある場合はその記載されている箇所
- 著作者などの名前(ない場合はその旨の告知)*1
- データセットのタイトル(ない場合はその旨の告知)
- 特にデータに添付するべきURLがあればそのURL(ない場合はその旨の告知)*2
- 政府以外の者の作成した著作物など、第三者の権利物が含まれている場合はその箇所と権利
*1 実演家が存在する場合は実演家の名前も。
*2 そのURLに当該データセットの著作権表示かライセンス情報が提供されている場合に限ります。
第三者の同意も得てライセンスすることをお勧めしています。これは、利用者がその第三者の同意なしにそのデータに含まれている第三者の著作物を利用してしまい、権利侵害を起こしてしまうことを防ぐためです。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを政府なら政府が自らの著作物に適用した場合、そこで許諾の対象になる権利は、通常、政府の権利のみです。他の者の権利については許諾の対象にならないため、データを利用する人は、利用の仕方によっては別途許諾を得る必要があるかも知れません。
なお、許諾を得なくても問題のない場合もあります。例えば、政府の報告書の中に第三者の文章の引用が含まれているものを、引用箇所も、その前後の報告書の文章もあわせて転載する場合を考えてみると、利用者は第三者の文章について執筆者から許諾をもらわなくても、著作権法上認められた引用として著作権侵害が起こらないことも十分考えられます。
オープンデータを適切なライセンスの下で公開している限り、オープンデータの誤りによって利用者に何らかの損害が発生したとしても、データ公開者である自治体の職員が責任を負う必要は通常ありません。
「クリエイティブ・コモンズ 表示4.0 国際」では「第5条 無保証および責任制限」において、データの内容を保証しないこと、データに起因する損害に対して可能な限り免責されることが記載されています。
クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際
第5条 無保証および責任制限
許諾者が別途合意しない限り、許諾者は可能な範囲において、ライセンス対象物を現状有姿のまま、現在可能な限りで提供し、明示、黙示、法令上、その他に関わらずライセンス対象物について一切の表明または保証をしません。これには、権利の帰属、商品性、特定の利用目的への適合性、権利侵害の不存在、隠れた瑕疵その他の瑕疵の不存在、正確性または誤りの存在もしくは不存在を含みますが、これに限られず、既知であるか否か、発見可能であるか否かを問いません。全部または一部の無保証が認められない場合、この無保証はあなたには適用されないこともあります。
可能な範囲において、本パブリック・ライセンスもしくはライセンス対象物の利用によって起きうる直接、特別、間接、偶発、結果的、懲罰的その他の損失、コスト、出費または損害について、例え損失、コスト、出費、損害の可能性について許諾者が知らされていたとしても、許諾者は、あなたに対し、いかなる法理(過失を含みますがこれに限られません)その他に基づいても責任を負いません。全部または一部の責任制限が認められない場合、この制限はあなたには適用されないこともあります。
「政府標準利用規約(第2.0版)」では「6) 免責について」において、データ利用に起因する損害に対して免責することが明記されています。
政府標準利用規約(第2.0版)
6) 免責について
ア 国は、利用者がコンテンツを用いて行う一切の行為(コンテンツを編集・加工等した情報を利用することを含む。)について何ら責任を負うものではありません。
イ コンテンツは、予告なく変更、移転、削除等が行われることがあります。
自治体がオープンデータとしてデータを公開するに当たっては、適切なライセンスを使用することによって、データの正確性等は保証しないこと、データを用いて行う一切の行為に公表者は責任を負わないことを表明するようにしてください。
例えば日本政府のデータカタログサイトDATA.GO.JPでは、利用規約の第6条に明記していますので参考にしてください。ただし、クリエイティブ・コモンズ表示ライセンスの無保証および責任制限条項等と矛盾する内容にならないように注意してください。
データカタログサイト DATA.GO.JP の利用規約
第6条 (無保証)
公表者は、本サイトで公開しているコンテンツの正確性、網羅性、特定の目的への適合性等について、 一切保証しません。公表者は、本サイトで公開しているコンテンツを用いて行う一切の行為(それら を編集・加工等した情報を利用することを含む。)について、何ら責任を負うものではありません。 公表者が、コンテンツにおいて、第三者に権利があることを表示・示唆している場合であっても、その表示・示唆は網羅的なものではありません。
公開したオープンデータに誤りが見つかった場合には、できるだけ早く誤りのあるデータを非公開にするなどして、利用できないようにしてください。さらに、該当するデータのダウンロード数やデータの内容などから、重要な誤りであると判断できる場合には、自治体のホームページのお知らせ等にデータの誤りがあった旨を掲載することも検討してください。
その後で、データの誤りを修正し、正しいデータをオープンデータカタログサイトなどに登録し直してください。重要な誤りであった場合には、正しいデータを公開したこともホームページなどで通知してください。
オープンデータに対してクリエイティブ・コモンズ・ライセンスや政府標準利用規約などの適切なライセンスが付与されている場合には、オープンデータの誤りに起因する損害は免責され、データを作成したり公開したりした自治体職員が責任を負うことは通常ありません。しかし、データの利用者からの信頼を失わないためにも、できるだけ迅速に対応することが望まれます。
データに誤りが見つかった場合の作業手順
- 誤りが見つかったデータを非公開にします
- 重大な誤りである場合にはホームページなどに掲載します
・データの内容やダウンロード数などから重要性を判断 - データを修正し、正しいデータを登録し直します
- 正しいデータを公開したことをホームページで通知します
オープンデータに対して、著作者の名誉を害するような望ましくない改変が行われた場合、いくつかの対処法があります。ライセンス違反として対処できる場合があるほか、クレジット表示の削除を求めることも可能です。
クリエイティブ・コモンズ・表示2.1日本ライセンスや、クリエイティブ・コモンズ・表示4.0国際ライセンスを採用している場合には、著作者の名誉・声望を害するような改変をした場合、それがライセンス違反になることがあります。これは著作者の名誉・声望を害するような二次的著作物を創作したり、複製することが、許諾の範囲に含まれていないためです。
また、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの多くのバージョンにある規定により、許諾者は、利用者に対して、許諾者や著作者への言及を除去するように通知することができます。利用者は通知があれば、実行可能な範囲ですべての言及を除去する義務を負います。
ほかに、ライセンス上の文言には直接関係がありませんが、改変される前の状態のデータをオンラインで発見・比較・参照しやすくしておくことで、改変されたデータを受け取った人が改ざんがないかどうかを確かめやすくしておくというのもひとつの工夫でしょう。
データに対して望ましくない改変がされた場合の対処方法
- ライセンス違反として対処します
・CCライセンスの場合に有効
・著作者の名誉・声望を害するような二次的著作物を創作したことが理由 - 許諾者や著作者への言及を除去するように通知します
・CCライセンスの場合に有効
・クレジット表示の削除を求めます
・通知を受けた利用者は実行可能な範囲ですべての言及を除去する義務を負います
活用する (8)
オープンデータは日本でも世界でも広く利用されており、オープンデータを活用した新しいサービスが数多く開発されています。
オープンデータの利活用事例集としては、内閣官房IT総合戦略室の「オープンデータ100」、一般社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構の「オープンデータ利活用ビジネス事例集」と「地方公共団体におけるデータ活用事例集」が参考になります。
米国をはじめとするオープンデータの利活用事例については、ニューヨーク大学の「Open Data 500」が参考になります。
オープンデータの利活用事例
- オープンデータ100(内閣官房IT総合戦略室)
- オープンデータ利活用ビジネス事例集(一般社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構 、2016/6/22)
- 地方公共団体におけるデータ活用事例集(一般社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構、2016/3/30)
- Open Data 500(ニューヨーク大学 Governance Lab)
オープンデータの利活用事例の詳細につきましては、以下を参照してください。
- 利活用事例(資料集)
オープンデータは日本の政府、自治体をはじめとする、公的機関から多数公開されています。
日本政府は「DATA.GO.JP」のデータカタログサイトをはじめ、政府統計の総合窓口であるe-Stat、国土数値情報のダウンロードサービス、地域経済分析システムであるリーサス(RESAS)、気象庁、法人インフォなどにより、さまざまなオープンデータを公開しています。
オープンデータに取り組む自治体数も360を超えました。自治体のオープンデータサイトについては、資料集の「自治体オープンデータサイト一覧」にまとめて掲載されています。
日本の代表的なオープンデータサイト
- 政府
・日本政府のデータカタログサイト
・e-stat 政府統計の総合窓口
・国土数値情報 – ダウンロードサービス
・RESAS 地域経済分析システム
・RESAS API
・気象庁 – 数値データページリンク集
・法人インフォ - 自治体
・自治体オープンデータサイト一覧 - 民間
・G空間情報センター
・オープンデータモニター
日本の代表的なオープンデータサイトにつきましては、以下を参照してください。
- 日本のオープンデータサイト(資料集)
オープンデータについて市民や企業に広く知って方法として、オープンデータの利活用を考えたり、実際に利用してみるイベントが多数開催されています。そうしたイベントの中でも代表的なのが、アイデアソンとハッカソンです。
アイデアソンとは、新しいサービスのアイデアをグループワーク等を通じて生み出す取り組みです。アイデアソンは、オープンデータの新しい活用方法を考える目的で、日本各地で頻繁に開催されています。アイデアソンは、特別な知識やスキルを必要としていないため、誰でも気軽に参加できます。ほとんどのアイデアソンは半日から1日程度で開催されています。
ハッカソンとは、アイデアソンなどで生み出した新しいサービスのアイデアを、実際に動くアプリケーションとして開発する取り組みです。ハッカソンは、オープンデータを活用した新しいサービスを具体化する目的で、日本各地で開催されています。ハッカソンでは実際にアプリを開発するため、エンジニアやデザイナーなどの技術者の参加が必要です。ハッカソンは、2〜3日間で開催される場合が多いです。
アイデアソンおよびハッカソンは自治体が主催するだけでなく、民間の支援団体や企業が開催する場合もあります。
アイデアソン
- 「アイデア(idea)+マラソン(marathon)」の造語
- オープンデータを活用した新しいサービスのアイデアをグループワークで生み出します
- 参加にあたり特別な知識やスキルは不要で、誰でも参加できます
- 半日から1日程度
ハッカソン
- 「ハック(hack)+マラソン(marathon)」の造語
- オープンデータを活用したアプリケーションをグループで開発します
- エンジニアやデザイナーの参加が必要です
- 2日から3日程度
内閣官房IT総合戦略室は、オープンデータに対する民間企業のニーズを把握するために、「オープンデータ官民ラウンドテーブル」を開催しています。
オープンデータ官民ラウンドテーブルの目的は、民間企業等のデータ活用を希望する者と、データを保有する府省庁等が直接対話する場を設けることによって、民間ニーズに即したオープンデータの取り組みを促進することです。
オープンデータ官民ラウンドテーブルはこれまでに3回開催され、以下のデータを対象に、民間企業からの公開要望やユースケースをヒアリングしました。

出典:オープンデータ官民ラウンドテーブル議事次第(内閣官房IT総合戦略室) をもとに公益財団法人九州先端科学技術研究所が作成
例えば、飲食店関連データについては「ぐるなび」から、訪日外国人関連データに関しては「ウィングアーク1st」から、公共交通関連データに関しては「ジョルダン」と「凸版印刷」からヒアリングを実施しました。
オープンデータ官民ラウンドテーブルの詳細につきましては、以下を参照してください。
- 企業ニーズ調査(資料集)
福岡市では、公益財団法人九州先端科学技術研究所、株式会社シティアスコム、株式会社駅前不動産ホールディングスの3社が、福岡市のオープンデータを活用することにより、不動産物件仲介サービス(Webサイト等)において、小学校区・中学校区(以降、校区と呼びます)に関する情報を提供する「校区情報サービス」を2018年11月から開始しました。
小学生や中学生の子供のいる世帯は、不動産物件を選ぶにあたって、校区について非常に関心が高く、物件を決める重要な条件の1つとなっています。しかし校区情報をデータとして公開していない自治体も多く、これまでは物件の属する校区を調べるための簡単な方法がありませんでした。そのため、不動産物件仲介サイトでは近くにある小学校・中学校を参考情報として表示していました。しかし校区によっては、必ずしも近くの学校に通えるわけではないため、利用者は自治体に問い合わせるなどして、個別に校区を調べる必要がありました。
「校区情報サービス」により、利用者には次のようなメリットがあります。
【利用者のメリット】
- 物件がどの校区に属しているのかを確認することができます
- 希望する校区内の物件に絞って探すことができます
さらに、不動産仲介事業者には次のようなメリットがあります。
【事業者のメリット】
- いつでも最新の校区データを利用できます
- 物件が属する校区について地図上で調べたり、自治体に確認したりする必要がありません
校区情報サービスによって、小学校区・中学校区のエリアを物件検索マップ上に表示させて、特定の校区に含まれている物件だけを調べることもできます。

https://www.ekimae-r-e.co.jp/search/map/40/0/
さらにISITのオープンデータプラットフォームは、さまざまなツールから利用することができます。
例えば、LINEのBOTによって利用者から位置情報を取得して、オープンデータプラットフォームで位置情報から校区を検索し、校区情報をLINEのトーク画面に表示させることができます。
ホームページで公開されているオープンデータについては、ファイルをダウンロードしてから使います。
オープンデータカタログサイトで公開されているデータについては、ファイルをダウンロードして使うことができるだけでなく、特定のファイル形式に対してはAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を通じてカタログサイトから直接データを取得することもできます。
例えば、日本政府をはじめ多くの自治体が利用しているCKAN(シーカン)というデータカタログサイトは、APIを標準で提供しているため、オープンデータをダウンロードすることなく、アプリケーションから取得することが可能です。
CKAN API使用例
データセットの一覧を取得する
- http://demo.ckan.org/api/3/action/package_list
“spending”という文字列を含むデータセットを検索する
- http://demo.ckan.org/api/3/action/package_search?q=spending
CKANのAPIの詳細については以下を参照してください。
クリエイティブ・コモンズの表示4.0(CC-BY 4.0)ライセンスを例にとると、データを利用する場合には、データに関して以下のような情報を収集し・表示や添付をすることが必要になります。
- 「このデータセットはCC BY 4.0で提供されています」「このデータセットはクリエイティブ・コモンズ表示4.0で提供されています」など、ライセンスに関する注意書きがあれば、それを「内容を変更せず、見やすい態様でそのまま掲載」すること。
- ライセンスの本文またはURLを添付または表示すること。
- 免責条項に関する注意書きがある場合は、それを「内容を変更せず、見やすい態様でそのまま掲載」すること。
- データセットに関する著作権表示がある場合は、「すべての著作権表示をそのままにして」おくこと。
- 著作者などの名前がある場合は表示すること。
- データセットのタイトルがある場合は表示すること。
- 特にデータに添付するべきURLがあればそのURLを添付すること。*2
- データを加工して、二次的著作物に相当するようなものを作成した場合には、その二次的著作物中で、データを利用していることを示すクレジットを合理的な方法で表示すること
上記4.-8. については、合理的であればどのような方式でも行うことができますが、二次的著作物や編集著作物に相当するようなものを作成した場合には、「少なくとも他の同様の著作者のクレジットが表示される箇所で当該クレジットを表示し、少なくとも他の同様の著作者のクレジットと同程度に目立つ方法で」行うことが必要になります。
例えば、日本政府のオープンデータカタログサイト「DATA.GO.JP」のデータを利用する場合のクレジット表記について具体的に説明します。
編集、加工を行わずそのまま複製して利用する場合には、「データセットの公表組織名」、「リソースの名称」を明記した後、当該データがクリエイティブ・コモンズ表示4.0国際ライセンスで公開されていることを記載し、最後にデータカタログサイトの利用規約を明記します。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスのURLや、データカタログサイトの利用規約のURLについては、文字で記載する方法の他に、「CCライセンス 表示 4.0 国際」の文字列や「データカタログサイト利用規約」の文字列にハイパーリンクを貼る方法で表記することもできます。
編集、加工等を行わずそのまま複製し、利用する場合
【データセットの公表組織名】、【リソースの名称】、CCライセンス 表示 4.0 国際(https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja)、データカタログサイト利用規約(http://www.data.go.jp)
データを編集、加工する場合には、最初に「この作品は、以下の著作物を改変して利用しています」と明記し、その後に編集、加工を行わない場合と同様のクレジットを明記します。
編集、加工等を行い、利用する場合
この作品(*)は、以下の著作物を改変して利用しています。
【データセットの公表組織名】、【リソースの名称】、CCライセンス 表示 4.0 国際(https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja)、データカタログサイト利用規約(http://www.data.go.jp)
(*) 作成するコンテンツに応じ、適宜、「アプリ」、「データベース」等と修正します。
出典: DATA.GO.JPの「利用規約に関するQ&A」を編集、http://www.data.go.jp/terms-of-use/faq-s-terms-of-use/
原則として、元のデータについているライセンスよりも条件を緩めることは認められません。詳しくは、以下の表で確認下さい。
<表の見方>
まず、左の列から元のデータについているCCライセンスの種類を選びます。その欄を横に見ていって、◯印のある部分に対応する縦の列のCCライセンスの種類が、新しいデータに付けることのできるライセンスになります。
※「改変禁止」の条件のついたデータは、そもそもそのデータを利用して新しいデータを作ることが認められないため、「表示-非営利-改変禁止」と「表示-改変禁止」の欄には、◯印がありません。また、元のデータに「継承」の条件が付いている場合は、新しい作品は、元の作品と同一の条件のライセンスしか付けることができません。
※記号の意味
by = 表示のみ
by-nd = 表示-改変禁止
by-nc-nd =表示-非営利-改変禁止
by-nc =表示-非営利
by-nc-sa =表示-非営利-継承
by-sa =表示-継承
pd =パブリック・ドメイン
オープンデータは、ライセンスや利用規約に定められている条件を遵守すれば自由に利用することができますが、使い方によっては他の法律に反する可能性があるため注意が必要です。
しかし、データの使い方によっては他の法律に違反することになる場合はあります。例えば気象予報の提供に関しては気象業務法に定めがあるため、気温データを活用して勝手に気象予報を発表すると法律違反になることなどが考えられます。
気象業務法違反となる例
気象予報の提供に関しては気象業務法に定めがあるため、気温データを活用して勝手に気象予報を発表すると法律違反になります